2019年3月6日水曜日

広州 洞窟探検記 2018/12 ③ 最終回

広州 洞窟探検記 2018/12 ③ 最終回


近野由利子

12/2(日)
広州、陽山での洞窟探検 2日目。
この日の予定は探検ではなくて、すでに知られている洞窟でのファンケイビングだ。


さかのぼると、2018年の始めにPangから連絡があり、見たことのない生成物を洞窟の中で発見して驚いたと言って、写真を送ってきた。

結局、それは浮遊カルサイトという生成物だったのだけど、少量なら私も見たことがあったけど、Pangが言うには、ものすごい大量にあるのを発見したというのだ。
さすが中国~。

浮遊カルサイトがある洞窟は、現地のケイバーに人気があり、Pangはその洞窟へ行くたびに浮遊カルサイトが破壊されていることを残念に思っている。
1~2年後には跡形も無くなるはず、その前に一度見に来てほしいというのがPangの希望だった。

今回の探検の目的地が広州になったのは、その大量の浮遊カルサイトを見ようじゃないか、というのが発端でもあった。

さて、どんだけ大量の浮遊カルサイトか、楽しみだけど...、
まずは恒例の朝ごはん!


今日の朝ごはんは、かの有名な飲茶だ~!
飲茶と言えば、香港が有名だけど、広州も本場らしい。

今回の探検は、ベースが町にあるので、朝晩の食事が豪華すぎる。
昨夜の火鍋も食べすぎたし、お腹すいてないんだけど...。

と、思いながらホテルの外の駐車場で中国チームを待っていたら、香港チームが使っているレンタカーのライトが点灯したままだということに気づいた。

どうやら、昨晩、寝ぼけ眼でホテルにたどり着いて、ライトを消すのを忘れたまま部屋に行ってしまったらしい。

気が付いた香港チームが、慌てて車のカギを持ってきて、エンジンをかけようとしたけど、時すでに遅し。バッテリーが上がって、エンジンがかからなくなっていた。

みんなアタフタしている中、Pangはすごく冷静で、重慶チームと相談して、車の修理屋を手配していた。

日本チームは、何もできず、見ているだけなので、先に飲茶レストランに行ってなさい、と送り出され、香港チームのマンディとケーシーに連れられてホテルを出発した。
飲茶レストランはすぐ近くなので、のんびりと歩いて向かった。

連れて来られた飲茶レストランは、街の商店街にあるホテルの2階にあり、すでに地元のお客さんで一杯だった。
カートにセイロをたくさん乗せたおばさんが、各テーブルを回ってきて、注文を取っている。

飲茶の本場である香港チームの二人に教えてもらいつつ楽しめるなんてラッキー!

■飲茶の手順
1.席につく
2.お茶と、ごはんなどメインの料理を注文する(注文票に自分で書く)
3.お茶で全員の皿と箸を洗う
4.カートの周りに群がって、おばちゃんに食べたい点心をせがむ
5.テーブルが皿であふれるので、必死で食べる
6. 4,5を繰り返す

カートの点心を選ぶときはワクワクする!

ワクワクしすぎた結果、朝食のテーブルとは思えないボリュームに....

必死で点心を食べ続け、もう限界と思ったころ、車のトラブル対処が終わって、Pangたちがやってきた。

シャオツォンは、昨晩食べすぎたから、朝ご飯はいらないと言って来なかった。んー、正解。

ようやく店を出たのは10時、さらに、近くの市場に寄り道して、昼に飲むというお茶用の茶葉を買う。

ホテルの駐車場に戻ってくると、別のお客さんが車で接触事故を起こしているのに遭遇した!

その人は、駐車しようと切り返ししてるうちに、後ろに停まっている車に、バックで猛突撃したのだ。
そして、知らん顔で去っていった。

ザ・中国な光景にびっくり。
一緒に見ていたPangも、「なにあれ!」と驚いていた。


気づいたらすっかりノンビリして、時間が過ぎており、洞窟のある村に着いたのは昼前の11時だった。

私は、今夜のフライトで帰るのだけど、果たして間に合うのか?
Pangも焦りだしたのか、話しかけても、心なしか答えが素っ気なくなってきた。

時間が圧しているせいもあるけど、実はPangは、昨晩の火鍋のとき薄着だったせいで、風邪をひいて、体調が悪かったらしい。

しかし、日本チームをもてなすというミッションは完全に遂行する意気込みだった。

目的の洞窟に到着したら、まずはドローンで記念撮影。
洞内では、気のすむまで浮遊カルサイトを見学。
その後、地底湖で記念撮影会。
出洞の前には、香港式ロイヤルミルクティーでお茶会。

予定のメニューはすべてこなし、どれもスキップされなかった。
すごい。
Pangは体調悪いのに、そんなことおくびにも出さないのだ。

なんでなの?!
中国に行くたびに、あふれるおもてなしを受けるけど、十分にお返しできず、消化不良な気持ちになる。

全てのイベントが終わって、出洞したのは15:40。
ここでPangは突然、焦りを露わにして、「早く!もう行かなきゃ!」と私たちを急かし、30分後には空港に向かって車を走らせ始めていた。

日本チームの車だけ先に出発したので、シャオツォンや香港チームに挨拶もできぬまま、そのまま高速道路へ...。

帰りの車の中で、ようやくPangは「実は昨晩から具合が悪い」と白状し、途中のサービスエリアでマンディと運転を交代した。

街に近づいたところで、マンディが少し道に迷い、空港近くのホテルに20時に到着。
日本チームのオカザとムギマは、明日のフライトなので、ホテル泊。
私とヨシモトさんは約4時間後には出国だ。

Pangたちは、挨拶もそこそこに、すぐにレンタカーを返しに行った。
Pangたちも21時すぎの電車を逃すと、香港に帰れないのだ。

日本だったら間に合うと思うけど、中国では何もかもに時間がかかるから、焦るのも無理はない。
そういえば、レンタカーを借りるときも、何だかすごく時間がかかったから、返すのも大変だろうな。

けっきょくPangたちは終電に乗れず、深夜バスで香港に帰ったらしい。
風邪なのに!



では、中国チーム渾身のおもてなしメニューをご紹介

★ドローンで記念撮影
ケーシーがマイ・ドローンを操作

じゃーん、これが鈣膜(Gaimo)洞窟だ!さすが中国!でかいわー!

★洞内の浮遊カルサイト
浮遊カルサイト(cave raft, calcite raft)は、水中の炭酸カルシウムが水面で結晶してできる薄い氷のような生成物。

水面で結晶するには、水面が長~い期間静止した状態にあることが条件だと思うけど、なかなかその条件は難しいと思われ、私は今まで小さな欠片しか見たことがない。

水に浮いた状態のものよりも、水がなくなって、乾燥した浮遊カルサイトが地面に薄い膜のように散乱している状態を見ることが多い。

しかし、この鈣膜(Gaimo)洞窟の浮遊カルサイトはすごい。
入洞して、30分程度奥に入ると、通路一面に浮遊カルサイトが敷き詰められている。

まさに足の踏み場もないので、無駄に破壊しないように、前を歩いた人の後ろを注意深くついて歩かなければいけない。

かつては、水が溜まっていた通路なのだろうけど、今は完全に乾燥していて、浮遊カルサイトとは言いながら、どれも浮遊していない。

浮遊カルサイトが敷き詰められた通路を緊張しながら歩く

細かい欠片もあるけど、大きなものはA4コピー用紙くらいのサイズがある。
Pangたちが初めて入ったときは、もっとたくさん大きな結晶があったそうだ。

この白いのが浮遊カルサイト。水がなくなって浮遊していない。
さらに奥へ進むと、まだ水のある地底湖に到達した。
この先は、通路が水で満たされていたので、ここで引き返した。

奥へ続くメインの水流には浮遊カルサイトはなかったけれど、端の方の水たまりのような場所では水面を氷のように浮遊カルサイトが覆っていた。

中心の氷っぽいのは浮遊している。右の粉々のやつは浮遊してない。

浮遊している浮遊カルサイト
これだけの規模の浮遊カルサイトを見たのは初めてで、驚いたし、面白かった!


★地底湖での記念撮影
Pangたちによると、この日はいつもより水が多かったそうだ。
透明な水の地底湖はとてもきれいだった。


青い地底湖をライトアップしてみる

地底湖を見つめる香港チーム
香港チームのケーシーが撮ってくれた日本チーム


★香港式ロイヤルミルクティーでお茶会
出洞前に、Pangが香港式のミルクティーでもてなしてくれた。
これには重慶っ子のシャオツォンも興味津々。
興味津々のシャオツォン

Pangは「お店では飲むけど、私も自分で入れるのは2回目だけどね」と言いながら、独特の煎れ方で紅茶を作ってくれた。
何度もポットを入れ替えて、じっくりと茶葉を煮出すのが特徴みたい
濃いめのミルクティーは疲れがとれて美味しかった~。


以上、この日のハイライトまとめでした。



深夜、私とヨシモトさんは無事に中国から出国し、朝には日本に到着した。

7時、セントレアに降り立った私は、泥まみれのケイビングスーツと竪穴装備を詰め込んだ80kgバックパックを背負ったまま、地下鉄に乗り換えて会社へ。

会社に着くと、バックパックをオフィスの倉庫に隠してから席につき、なに食わぬ顔でパソコンを起動する。

遠征明けのオフィスワークは、いつもより幸せに感じる。
オフィスはトイレもデスクもキレイだし、コンビニ弁当はおいしい。
パソコンの前に座って安静に仕事ができるのもありがたいわー。
密かにウキウキした気持ちで、月曜日の仕事をスタートさせた。


今回、探検した洞窟は少し地味だったけど、いつもどおり、中国の旅はもりだくさんだった。
私としては、JETのメンバーたちと一緒に行けたことが満足の中国遠征だった。
他のみんなにとっても、この遠征が今後のケイビング活動に良い影響をもたらすことになるといいな、と思う。


(おしまい)











2019年3月1日金曜日

広州 洞窟探検記 2018/12 ②

広州 洞窟探検記 2018/12 ②


近野由利子

12/1(土)
さぁ、いよいよ広州週末女子会洞窟探検スタート!

探検と言えば、まずは朝めしから!
アジアの国々では、朝ご飯を外食ですませる習慣のところが多くて、中国も美味しい朝ご飯を出すお店がたくさんある。
屋台のお店で、おかゆに揚げパンをトッピングしたやつとか、やけにおいしくて、朝から丼を抱えて食べてしまう。

その他の国では、ラオスの朝ごはん。屋台の汁そば屋さんが最高。
ラオスでは、コーヒーもポピュラーなので、汁そばの後にコーヒーでまったりとするのがたまりません。

日本でも朝定食とかモーニングとかあるけど、やっぱり毎日の朝ご飯は家で、ってイメージが強い気がする。
朝はできるだけノンビリしたい私は、日本でもカジュアルな朝ご飯の外食文化が広がるといいなー、と思っている。

この日は、麺&おかゆのお店で朝食。
メニューの種類が多くて選ぶのが大変だった。
こんな感じ

わんたん
わんたん&野菜
緑のわんたん
緑のわんたん&野菜
汁そば
汁そばと野菜
汁そば&わんたん
汁そば&緑のわんたん
汁そば&わんたん&野菜





選べねー!

私はスタンダードな、汁そば&わんたんを注文したけど、ダシのきいたアッサリ味でウマー!
広州は、味付けがアッサリしていて、日本人にはぴったりだ。

麺やおかゆ以外のおかずも豊富。一人10元だった。
のんびりと朝食を食べてから、車で洞窟のある村へ向かった。
村に到着したのは、10時。
ホテルから近いので、ゆっくりしても余裕だった。

村の小さな広場みたいなところに車を停めると、村人たちが見物に集まってきた。
この村での探検の許可は、事前にPangが政府に申請しておいてくれたので、外国人の私たちも多少、安心して行動できる。

ふつうの観光旅行ならおそらく不都合はないだろうけど、地方の村や山奥の洞窟に入るときには、たとえ許可をもらっていても、外国人は行動に気をつけなければいけない。
その国の情報や資源を盗もうとしていると疑われないように。
これは中国だけでなく、他の国でも同様で、日本と同じ感覚でいるのはよくない。

といっても、村の人たちはみんなニコニコして、優しそう。
名物の鶏たちも、家々の間を駆け回って、元気そうだ。

私たちは、村人たちの好奇の目を浴びながら準備をして、村の裏山にある洞窟へ。

村人に注目されながら洞窟へ向かう

Pangたちが、以前この村に来たとき、入り口だけ見つけて中に入っていない2つの洞窟があり、それらを探検するのが、今日の目的だ。

ホテルから車で20分、洞口はすでに発見済み、あとは中に入るだけ。
!なんて贅沢な殿様探検なのだろうか!

ふだん、日本では、洞窟を探すために、山の中を一日中歩き回って、洞窟の気配すら感じることもなく一日を終えて、
「今日、何のために山に来たんだっけ...。」
と、自分に問いかけ、虚しい思いをすることばかりなので、この贅沢さに戸惑いを覚えてしまう...。

村の裏山を40~50分歩いて、少し迷った末に、洞口に到着。めちゃ近い!
山の斜面は、カレンフェルトと言われる典型的な石灰岩の地形だが、石が黒っぽい。

通常、よく見る石灰岩は白っぽい色なので、少し変わっていると思ったけど、表面がよく溶けていたので、洞窟への期待が高まった。

黒っぽい石灰。少し雨が降ったので石が濡れている

洞口に到着すると、Pangが「さぁ、どうぞ入って」と薦めてくれた。
「え、でもPangが見つけた穴だし、Pangたちが先に入りなよ」
と、躊躇したら、
「みんなに探検してほしくて連れてきたから、入って。私たちは洞口でおしゃべりしたり、のんびりしてから入るよ。」

うーん。
さすが。
中国は、ワールドクラスの洞窟が目白押し、見つけても見つけてもキリがないというゴージャスな国だ。
こんな小さな穴、惜しくもないのだろう。
余裕ありすぎ。

私たち日本チームは、遠慮なく初探検の栄誉を受けて、先陣を切って中に入ることにした。
入り口は、「え?これ岐阜の洞窟じゃないの?」と間違うほどの小さな隙間。
岐阜の洞窟...ではなくて、中国の洞窟です


洞口から下をのぞき込むと、2mくらい下に足場が見えて、ホールドもしっかりしていたので、いったん、フリーで降りてみた。
降りれなくないけど、登るのがちょっと大変。

いろんな人が降りることになるので、安全のためにロープを張ろうと、また洞口に戻り、一発アンカーを打って、SRTのルートを作った。
その下は傾斜の緩い斜面で、ロープは不要になった。

斜面を一番下まで降りきると、広いホールの端っこに降り立った。
頭上に見える洞口までは12~13mの高さだろうか?
後ろから、測量チームが降りてくるのが見えた。

先に一人で探検してやるー、と、張り切って歩き出したけど、どうやら目の前のホールがこの洞窟の全てみたいだ。
SRT装備を外して地面に置いて、少し見て回った。

ホールはいびつな楕円形で20×100mくらい?
地面に半径1.5m、深さ50cmくらいの人工の穴が1つ穿ってある。
手作りの木梯子も落ちている。
明らかに初めての探検者は私たちではなくて、村人たちだ。

大きな洞窟が多い国では、洞窟を様々な用途に使用しているため、アクセスが容易な洞窟はかなりの確率で人の痕跡が残っている。

民家の近くにある洞窟では、コウモリのふん(グアノ)を集めて、火薬や肥料を作っていることが多いので、この洞窟の地面にあった人工の穴は、火薬を作るのに使われたのかなーと思ったけど、未確認。
それほど大きな洞窟ではないし、コウモリも少なそうなので、他の用途だったのかもしれない。

火薬や肥料としてグアノを活用する以外には、コウモリや洞内河川の魚を、食用に捕獲しているところもあり、その場合は捕獲用のアミや仕掛けが残されていることが多いが、この洞窟では見つからなかった。
村は家畜が多くて豊かなので、わざわざコウモリを食べなくていいのだろう。


楕円のホールからは、対角線の二方向に枝道が伸びていて、一方は、40mくらいの長さ、もう一方はもう少し長くてクネクネと続いていた。

ひととおり歩き回ってからホールに戻ると、中国チームもみんなバラバラと降りてきていて、洞窟の中が騒がしくなってきた。

みんな、あーだこーだ言いながら洞窟の中を歩きまわっていたが、香港チームのマンディが近づいてきて、
「あれ、これだけしか続いてなかったのか。あまり大きくなかったね、ごめん。」
と、申し訳なさそうに言ってきた。

言われてびっくり!
「謝らないで!日本だったら、この洞窟はけっこうすごい洞窟だよ!それに、どんな穴でも探検は楽しいし!」
と、答えたらマンディは安心したようだった。

この探検での中国チームの目的は、日本チームを喜ばせることだったみたい。
なんというおもてなし魂。


一つめの洞窟の測量を終えて、出洞したのは15時ごろだった。
もう一つの洞窟も近くにあるということで、そのまま移動。
30分後には2つめの洞窟の入り口に到着していた。

2つめの洞窟の洞内から外を見たところ。メインルートは真下に向かっている
2つめの洞窟はほとんど竪穴で、3ピッチに分かれた縦ルートを降りきったところでアッサリと終わっていた。
高低差51mで、測量した全体の長さは、水平部分を含めると69.7mだった。

穴自体はそれほどの規模はないけれど、全員が一番下まで降りるのに時間がかかった。
竪穴は1本のロープで降りるので、1ピッチを1人ずつしか降りられず、どうしても時間がかかってしまう。

竪穴の底には、クラック状の狭い岩の隙間があって、水平方向にさらに奥へ続いていたので、そこにも体をねじ込んだけど、あまりに狭くて奥には行けず、その先のルートは見つからなかった。

この狭い隙間も、岐阜の洞窟にそっくりで、私たちはこの穴を「郡上洞」と名付けた。
郡上は岐阜の中でも私たちがよく行くカルストエリアなのだ。

日本チームが狭いところに入り込んでいると、中国チームが真似して入ってきた。
中国の洞窟はどこも大きいので、こんな狭い場所に入るのが珍しいようだ。

しばらくすると、陽気な香港チームのメンバーたちが、ワイワイと騒ぎ始めた。
何事かと思って見ていると、狭いルートに体を押し込んでから、中でUターンして戻ってくるまでに何秒かかるか、というタイムトライアルのレースを始めていた。

単純なゲームだけど、お互いに応援し合いながらやると、すごく楽しいのでおススメです。
日本チーム・重慶チームも参戦して、みんなでゲラゲラ笑って大盛り上がりだった。
狭いルートに入るのに、こんなに盛り上がったのは初めてだ。



みんなで大騒ぎしているうちに測量も終わったので、順番に出洞を開始した。
入るときと同様に、1人ずつしか出られないので、また時間がかかる。
日本チームは、最下層の小さな空間に身を寄せて、英語の苦手な重慶メンバーと、片言でコミュニケーションしながら、のんびりと自分たちの順番を待った。

全員、出洞したのは、夜の20:30。
入洞が15:30ごろで遅めだったし、人数も多いので仕方ない。



片付けをして下山し、村の駐車場で着替えてから、街に帰りついたのは21時半すぎ。
今日もみんな腹ペコだったので、そのまま町の火鍋レストランに突入した。

火鍋レストランに入ったとたん、重慶っ子のシャオツォンはゴキゲンになって、嬉しそうに鍋のつけダレを作り始めた。

火鍋は、重慶の名物料理で、真っ赤な激辛鍋だ。
最近は日本でもファンが増えているので、知っている人も多いだろう。
唐辛子も大量に入っているけど、花椒(ファージャー)と言われる四川省独特の山椒が、強烈な刺激を加えている。
辛みとは違う、独特な刺激で、口の中がマヒしたような感じになるのだけど、一度食べるとクセになる。

四川省出身の友人が、日本に留学に来たとき、大切そうに花椒(ファージャー)を袋に入れて持ってきていたので、日本人にとっての醤油みたいなもの。故郷の味なのかな。
それでシャオツォンも嬉しそうなのだろう。

火鍋の具材は、野菜・肉・豆腐・魚介など、とても種類が多いし、つけダレも味噌や醤油をそれぞれの好みで加え、ニンニクを入れたり、ネギやゴマを入れたりと、本当に楽しい!

見たことのない具材がいっぱいなのだ

奥が激辛の鍋で、手前は辛くない安全な鍋

広州で火鍋を食べられると思わなかったけど、シャオツォンに正しい食べ方を教わりながら、わいわいと賑やかな火鍋を楽しんでいた。
「わー、辛い~」
「私はこれくらいの辛さは平気だもん!」
そんな、無邪気な会話を交わせるだけの余裕があったのは最初だけだった。

どうやら、重慶っ子には辛さが足りなかったらしい。
重慶チームの3人が店のマスターに頼んで、辛そうな鍋の素を大量に追加し始めた。

大きなボウルにいっぱい入った真っ赤な鍋の素を、マスターがおたま山盛りにすくって、ボチャボチャと鍋に投入するのを、重慶チームの3人は満足そうに頷きながら見ている。

まさかの緊急事態を目の間にして、香港チームと日本チームは全員、恐怖で絶叫の声を上げたが、後の祭り。
ただでも辛かった火鍋が、煮えたぎるマグマにしか見えなくなった。もはや地獄の鍋だ。
重慶チーム 「まだ辛さが足りないよ」
香港・日本チーム 「Oh, it looks so evil...」(すごい邪悪に見えるわ...)

その日の探検の成果を、邪悪な火鍋で祝いつつ、夜は更けていった。
明日は、すでに探検済みの洞窟でファンケイビングの後、空港に帰るぞー。

(つづく)