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2019年3月6日水曜日

広州 洞窟探検記 2018/12 ③ 最終回

広州 洞窟探検記 2018/12 ③ 最終回


近野由利子

12/2(日)
広州、陽山での洞窟探検 2日目。
この日の予定は探検ではなくて、すでに知られている洞窟でのファンケイビングだ。


さかのぼると、2018年の始めにPangから連絡があり、見たことのない生成物を洞窟の中で発見して驚いたと言って、写真を送ってきた。

結局、それは浮遊カルサイトという生成物だったのだけど、少量なら私も見たことがあったけど、Pangが言うには、ものすごい大量にあるのを発見したというのだ。
さすが中国~。

浮遊カルサイトがある洞窟は、現地のケイバーに人気があり、Pangはその洞窟へ行くたびに浮遊カルサイトが破壊されていることを残念に思っている。
1~2年後には跡形も無くなるはず、その前に一度見に来てほしいというのがPangの希望だった。

今回の探検の目的地が広州になったのは、その大量の浮遊カルサイトを見ようじゃないか、というのが発端でもあった。

さて、どんだけ大量の浮遊カルサイトか、楽しみだけど...、
まずは恒例の朝ごはん!


今日の朝ごはんは、かの有名な飲茶だ~!
飲茶と言えば、香港が有名だけど、広州も本場らしい。

今回の探検は、ベースが町にあるので、朝晩の食事が豪華すぎる。
昨夜の火鍋も食べすぎたし、お腹すいてないんだけど...。

と、思いながらホテルの外の駐車場で中国チームを待っていたら、香港チームが使っているレンタカーのライトが点灯したままだということに気づいた。

どうやら、昨晩、寝ぼけ眼でホテルにたどり着いて、ライトを消すのを忘れたまま部屋に行ってしまったらしい。

気が付いた香港チームが、慌てて車のカギを持ってきて、エンジンをかけようとしたけど、時すでに遅し。バッテリーが上がって、エンジンがかからなくなっていた。

みんなアタフタしている中、Pangはすごく冷静で、重慶チームと相談して、車の修理屋を手配していた。

日本チームは、何もできず、見ているだけなので、先に飲茶レストランに行ってなさい、と送り出され、香港チームのマンディとケーシーに連れられてホテルを出発した。
飲茶レストランはすぐ近くなので、のんびりと歩いて向かった。

連れて来られた飲茶レストランは、街の商店街にあるホテルの2階にあり、すでに地元のお客さんで一杯だった。
カートにセイロをたくさん乗せたおばさんが、各テーブルを回ってきて、注文を取っている。

飲茶の本場である香港チームの二人に教えてもらいつつ楽しめるなんてラッキー!

■飲茶の手順
1.席につく
2.お茶と、ごはんなどメインの料理を注文する(注文票に自分で書く)
3.お茶で全員の皿と箸を洗う
4.カートの周りに群がって、おばちゃんに食べたい点心をせがむ
5.テーブルが皿であふれるので、必死で食べる
6. 4,5を繰り返す

カートの点心を選ぶときはワクワクする!

ワクワクしすぎた結果、朝食のテーブルとは思えないボリュームに....

必死で点心を食べ続け、もう限界と思ったころ、車のトラブル対処が終わって、Pangたちがやってきた。

シャオツォンは、昨晩食べすぎたから、朝ご飯はいらないと言って来なかった。んー、正解。

ようやく店を出たのは10時、さらに、近くの市場に寄り道して、昼に飲むというお茶用の茶葉を買う。

ホテルの駐車場に戻ってくると、別のお客さんが車で接触事故を起こしているのに遭遇した!

その人は、駐車しようと切り返ししてるうちに、後ろに停まっている車に、バックで猛突撃したのだ。
そして、知らん顔で去っていった。

ザ・中国な光景にびっくり。
一緒に見ていたPangも、「なにあれ!」と驚いていた。


気づいたらすっかりノンビリして、時間が過ぎており、洞窟のある村に着いたのは昼前の11時だった。

私は、今夜のフライトで帰るのだけど、果たして間に合うのか?
Pangも焦りだしたのか、話しかけても、心なしか答えが素っ気なくなってきた。

時間が圧しているせいもあるけど、実はPangは、昨晩の火鍋のとき薄着だったせいで、風邪をひいて、体調が悪かったらしい。

しかし、日本チームをもてなすというミッションは完全に遂行する意気込みだった。

目的の洞窟に到着したら、まずはドローンで記念撮影。
洞内では、気のすむまで浮遊カルサイトを見学。
その後、地底湖で記念撮影会。
出洞の前には、香港式ロイヤルミルクティーでお茶会。

予定のメニューはすべてこなし、どれもスキップされなかった。
すごい。
Pangは体調悪いのに、そんなことおくびにも出さないのだ。

なんでなの?!
中国に行くたびに、あふれるおもてなしを受けるけど、十分にお返しできず、消化不良な気持ちになる。

全てのイベントが終わって、出洞したのは15:40。
ここでPangは突然、焦りを露わにして、「早く!もう行かなきゃ!」と私たちを急かし、30分後には空港に向かって車を走らせ始めていた。

日本チームの車だけ先に出発したので、シャオツォンや香港チームに挨拶もできぬまま、そのまま高速道路へ...。

帰りの車の中で、ようやくPangは「実は昨晩から具合が悪い」と白状し、途中のサービスエリアでマンディと運転を交代した。

街に近づいたところで、マンディが少し道に迷い、空港近くのホテルに20時に到着。
日本チームのオカザとムギマは、明日のフライトなので、ホテル泊。
私とヨシモトさんは約4時間後には出国だ。

Pangたちは、挨拶もそこそこに、すぐにレンタカーを返しに行った。
Pangたちも21時すぎの電車を逃すと、香港に帰れないのだ。

日本だったら間に合うと思うけど、中国では何もかもに時間がかかるから、焦るのも無理はない。
そういえば、レンタカーを借りるときも、何だかすごく時間がかかったから、返すのも大変だろうな。

けっきょくPangたちは終電に乗れず、深夜バスで香港に帰ったらしい。
風邪なのに!



では、中国チーム渾身のおもてなしメニューをご紹介

★ドローンで記念撮影
ケーシーがマイ・ドローンを操作

じゃーん、これが鈣膜(Gaimo)洞窟だ!さすが中国!でかいわー!

★洞内の浮遊カルサイト
浮遊カルサイト(cave raft, calcite raft)は、水中の炭酸カルシウムが水面で結晶してできる薄い氷のような生成物。

水面で結晶するには、水面が長~い期間静止した状態にあることが条件だと思うけど、なかなかその条件は難しいと思われ、私は今まで小さな欠片しか見たことがない。

水に浮いた状態のものよりも、水がなくなって、乾燥した浮遊カルサイトが地面に薄い膜のように散乱している状態を見ることが多い。

しかし、この鈣膜(Gaimo)洞窟の浮遊カルサイトはすごい。
入洞して、30分程度奥に入ると、通路一面に浮遊カルサイトが敷き詰められている。

まさに足の踏み場もないので、無駄に破壊しないように、前を歩いた人の後ろを注意深くついて歩かなければいけない。

かつては、水が溜まっていた通路なのだろうけど、今は完全に乾燥していて、浮遊カルサイトとは言いながら、どれも浮遊していない。

浮遊カルサイトが敷き詰められた通路を緊張しながら歩く

細かい欠片もあるけど、大きなものはA4コピー用紙くらいのサイズがある。
Pangたちが初めて入ったときは、もっとたくさん大きな結晶があったそうだ。

この白いのが浮遊カルサイト。水がなくなって浮遊していない。
さらに奥へ進むと、まだ水のある地底湖に到達した。
この先は、通路が水で満たされていたので、ここで引き返した。

奥へ続くメインの水流には浮遊カルサイトはなかったけれど、端の方の水たまりのような場所では水面を氷のように浮遊カルサイトが覆っていた。

中心の氷っぽいのは浮遊している。右の粉々のやつは浮遊してない。

浮遊している浮遊カルサイト
これだけの規模の浮遊カルサイトを見たのは初めてで、驚いたし、面白かった!


★地底湖での記念撮影
Pangたちによると、この日はいつもより水が多かったそうだ。
透明な水の地底湖はとてもきれいだった。


青い地底湖をライトアップしてみる

地底湖を見つめる香港チーム
香港チームのケーシーが撮ってくれた日本チーム


★香港式ロイヤルミルクティーでお茶会
出洞前に、Pangが香港式のミルクティーでもてなしてくれた。
これには重慶っ子のシャオツォンも興味津々。
興味津々のシャオツォン

Pangは「お店では飲むけど、私も自分で入れるのは2回目だけどね」と言いながら、独特の煎れ方で紅茶を作ってくれた。
何度もポットを入れ替えて、じっくりと茶葉を煮出すのが特徴みたい
濃いめのミルクティーは疲れがとれて美味しかった~。


以上、この日のハイライトまとめでした。



深夜、私とヨシモトさんは無事に中国から出国し、朝には日本に到着した。

7時、セントレアに降り立った私は、泥まみれのケイビングスーツと竪穴装備を詰め込んだ80kgバックパックを背負ったまま、地下鉄に乗り換えて会社へ。

会社に着くと、バックパックをオフィスの倉庫に隠してから席につき、なに食わぬ顔でパソコンを起動する。

遠征明けのオフィスワークは、いつもより幸せに感じる。
オフィスはトイレもデスクもキレイだし、コンビニ弁当はおいしい。
パソコンの前に座って安静に仕事ができるのもありがたいわー。
密かにウキウキした気持ちで、月曜日の仕事をスタートさせた。


今回、探検した洞窟は少し地味だったけど、いつもどおり、中国の旅はもりだくさんだった。
私としては、JETのメンバーたちと一緒に行けたことが満足の中国遠征だった。
他のみんなにとっても、この遠征が今後のケイビング活動に良い影響をもたらすことになるといいな、と思う。


(おしまい)











2019年3月1日金曜日

広州 洞窟探検記 2018/12 ②

広州 洞窟探検記 2018/12 ②


近野由利子

12/1(土)
さぁ、いよいよ広州週末女子会洞窟探検スタート!

探検と言えば、まずは朝めしから!
アジアの国々では、朝ご飯を外食ですませる習慣のところが多くて、中国も美味しい朝ご飯を出すお店がたくさんある。
屋台のお店で、おかゆに揚げパンをトッピングしたやつとか、やけにおいしくて、朝から丼を抱えて食べてしまう。

その他の国では、ラオスの朝ごはん。屋台の汁そば屋さんが最高。
ラオスでは、コーヒーもポピュラーなので、汁そばの後にコーヒーでまったりとするのがたまりません。

日本でも朝定食とかモーニングとかあるけど、やっぱり毎日の朝ご飯は家で、ってイメージが強い気がする。
朝はできるだけノンビリしたい私は、日本でもカジュアルな朝ご飯の外食文化が広がるといいなー、と思っている。

この日は、麺&おかゆのお店で朝食。
メニューの種類が多くて選ぶのが大変だった。
こんな感じ

わんたん
わんたん&野菜
緑のわんたん
緑のわんたん&野菜
汁そば
汁そばと野菜
汁そば&わんたん
汁そば&緑のわんたん
汁そば&わんたん&野菜





選べねー!

私はスタンダードな、汁そば&わんたんを注文したけど、ダシのきいたアッサリ味でウマー!
広州は、味付けがアッサリしていて、日本人にはぴったりだ。

麺やおかゆ以外のおかずも豊富。一人10元だった。
のんびりと朝食を食べてから、車で洞窟のある村へ向かった。
村に到着したのは、10時。
ホテルから近いので、ゆっくりしても余裕だった。

村の小さな広場みたいなところに車を停めると、村人たちが見物に集まってきた。
この村での探検の許可は、事前にPangが政府に申請しておいてくれたので、外国人の私たちも多少、安心して行動できる。

ふつうの観光旅行ならおそらく不都合はないだろうけど、地方の村や山奥の洞窟に入るときには、たとえ許可をもらっていても、外国人は行動に気をつけなければいけない。
その国の情報や資源を盗もうとしていると疑われないように。
これは中国だけでなく、他の国でも同様で、日本と同じ感覚でいるのはよくない。

といっても、村の人たちはみんなニコニコして、優しそう。
名物の鶏たちも、家々の間を駆け回って、元気そうだ。

私たちは、村人たちの好奇の目を浴びながら準備をして、村の裏山にある洞窟へ。

村人に注目されながら洞窟へ向かう

Pangたちが、以前この村に来たとき、入り口だけ見つけて中に入っていない2つの洞窟があり、それらを探検するのが、今日の目的だ。

ホテルから車で20分、洞口はすでに発見済み、あとは中に入るだけ。
!なんて贅沢な殿様探検なのだろうか!

ふだん、日本では、洞窟を探すために、山の中を一日中歩き回って、洞窟の気配すら感じることもなく一日を終えて、
「今日、何のために山に来たんだっけ...。」
と、自分に問いかけ、虚しい思いをすることばかりなので、この贅沢さに戸惑いを覚えてしまう...。

村の裏山を40~50分歩いて、少し迷った末に、洞口に到着。めちゃ近い!
山の斜面は、カレンフェルトと言われる典型的な石灰岩の地形だが、石が黒っぽい。

通常、よく見る石灰岩は白っぽい色なので、少し変わっていると思ったけど、表面がよく溶けていたので、洞窟への期待が高まった。

黒っぽい石灰。少し雨が降ったので石が濡れている

洞口に到着すると、Pangが「さぁ、どうぞ入って」と薦めてくれた。
「え、でもPangが見つけた穴だし、Pangたちが先に入りなよ」
と、躊躇したら、
「みんなに探検してほしくて連れてきたから、入って。私たちは洞口でおしゃべりしたり、のんびりしてから入るよ。」

うーん。
さすが。
中国は、ワールドクラスの洞窟が目白押し、見つけても見つけてもキリがないというゴージャスな国だ。
こんな小さな穴、惜しくもないのだろう。
余裕ありすぎ。

私たち日本チームは、遠慮なく初探検の栄誉を受けて、先陣を切って中に入ることにした。
入り口は、「え?これ岐阜の洞窟じゃないの?」と間違うほどの小さな隙間。
岐阜の洞窟...ではなくて、中国の洞窟です


洞口から下をのぞき込むと、2mくらい下に足場が見えて、ホールドもしっかりしていたので、いったん、フリーで降りてみた。
降りれなくないけど、登るのがちょっと大変。

いろんな人が降りることになるので、安全のためにロープを張ろうと、また洞口に戻り、一発アンカーを打って、SRTのルートを作った。
その下は傾斜の緩い斜面で、ロープは不要になった。

斜面を一番下まで降りきると、広いホールの端っこに降り立った。
頭上に見える洞口までは12~13mの高さだろうか?
後ろから、測量チームが降りてくるのが見えた。

先に一人で探検してやるー、と、張り切って歩き出したけど、どうやら目の前のホールがこの洞窟の全てみたいだ。
SRT装備を外して地面に置いて、少し見て回った。

ホールはいびつな楕円形で20×100mくらい?
地面に半径1.5m、深さ50cmくらいの人工の穴が1つ穿ってある。
手作りの木梯子も落ちている。
明らかに初めての探検者は私たちではなくて、村人たちだ。

大きな洞窟が多い国では、洞窟を様々な用途に使用しているため、アクセスが容易な洞窟はかなりの確率で人の痕跡が残っている。

民家の近くにある洞窟では、コウモリのふん(グアノ)を集めて、火薬や肥料を作っていることが多いので、この洞窟の地面にあった人工の穴は、火薬を作るのに使われたのかなーと思ったけど、未確認。
それほど大きな洞窟ではないし、コウモリも少なそうなので、他の用途だったのかもしれない。

火薬や肥料としてグアノを活用する以外には、コウモリや洞内河川の魚を、食用に捕獲しているところもあり、その場合は捕獲用のアミや仕掛けが残されていることが多いが、この洞窟では見つからなかった。
村は家畜が多くて豊かなので、わざわざコウモリを食べなくていいのだろう。


楕円のホールからは、対角線の二方向に枝道が伸びていて、一方は、40mくらいの長さ、もう一方はもう少し長くてクネクネと続いていた。

ひととおり歩き回ってからホールに戻ると、中国チームもみんなバラバラと降りてきていて、洞窟の中が騒がしくなってきた。

みんな、あーだこーだ言いながら洞窟の中を歩きまわっていたが、香港チームのマンディが近づいてきて、
「あれ、これだけしか続いてなかったのか。あまり大きくなかったね、ごめん。」
と、申し訳なさそうに言ってきた。

言われてびっくり!
「謝らないで!日本だったら、この洞窟はけっこうすごい洞窟だよ!それに、どんな穴でも探検は楽しいし!」
と、答えたらマンディは安心したようだった。

この探検での中国チームの目的は、日本チームを喜ばせることだったみたい。
なんというおもてなし魂。


一つめの洞窟の測量を終えて、出洞したのは15時ごろだった。
もう一つの洞窟も近くにあるということで、そのまま移動。
30分後には2つめの洞窟の入り口に到着していた。

2つめの洞窟の洞内から外を見たところ。メインルートは真下に向かっている
2つめの洞窟はほとんど竪穴で、3ピッチに分かれた縦ルートを降りきったところでアッサリと終わっていた。
高低差51mで、測量した全体の長さは、水平部分を含めると69.7mだった。

穴自体はそれほどの規模はないけれど、全員が一番下まで降りるのに時間がかかった。
竪穴は1本のロープで降りるので、1ピッチを1人ずつしか降りられず、どうしても時間がかかってしまう。

竪穴の底には、クラック状の狭い岩の隙間があって、水平方向にさらに奥へ続いていたので、そこにも体をねじ込んだけど、あまりに狭くて奥には行けず、その先のルートは見つからなかった。

この狭い隙間も、岐阜の洞窟にそっくりで、私たちはこの穴を「郡上洞」と名付けた。
郡上は岐阜の中でも私たちがよく行くカルストエリアなのだ。

日本チームが狭いところに入り込んでいると、中国チームが真似して入ってきた。
中国の洞窟はどこも大きいので、こんな狭い場所に入るのが珍しいようだ。

しばらくすると、陽気な香港チームのメンバーたちが、ワイワイと騒ぎ始めた。
何事かと思って見ていると、狭いルートに体を押し込んでから、中でUターンして戻ってくるまでに何秒かかるか、というタイムトライアルのレースを始めていた。

単純なゲームだけど、お互いに応援し合いながらやると、すごく楽しいのでおススメです。
日本チーム・重慶チームも参戦して、みんなでゲラゲラ笑って大盛り上がりだった。
狭いルートに入るのに、こんなに盛り上がったのは初めてだ。



みんなで大騒ぎしているうちに測量も終わったので、順番に出洞を開始した。
入るときと同様に、1人ずつしか出られないので、また時間がかかる。
日本チームは、最下層の小さな空間に身を寄せて、英語の苦手な重慶メンバーと、片言でコミュニケーションしながら、のんびりと自分たちの順番を待った。

全員、出洞したのは、夜の20:30。
入洞が15:30ごろで遅めだったし、人数も多いので仕方ない。



片付けをして下山し、村の駐車場で着替えてから、街に帰りついたのは21時半すぎ。
今日もみんな腹ペコだったので、そのまま町の火鍋レストランに突入した。

火鍋レストランに入ったとたん、重慶っ子のシャオツォンはゴキゲンになって、嬉しそうに鍋のつけダレを作り始めた。

火鍋は、重慶の名物料理で、真っ赤な激辛鍋だ。
最近は日本でもファンが増えているので、知っている人も多いだろう。
唐辛子も大量に入っているけど、花椒(ファージャー)と言われる四川省独特の山椒が、強烈な刺激を加えている。
辛みとは違う、独特な刺激で、口の中がマヒしたような感じになるのだけど、一度食べるとクセになる。

四川省出身の友人が、日本に留学に来たとき、大切そうに花椒(ファージャー)を袋に入れて持ってきていたので、日本人にとっての醤油みたいなもの。故郷の味なのかな。
それでシャオツォンも嬉しそうなのだろう。

火鍋の具材は、野菜・肉・豆腐・魚介など、とても種類が多いし、つけダレも味噌や醤油をそれぞれの好みで加え、ニンニクを入れたり、ネギやゴマを入れたりと、本当に楽しい!

見たことのない具材がいっぱいなのだ

奥が激辛の鍋で、手前は辛くない安全な鍋

広州で火鍋を食べられると思わなかったけど、シャオツォンに正しい食べ方を教わりながら、わいわいと賑やかな火鍋を楽しんでいた。
「わー、辛い~」
「私はこれくらいの辛さは平気だもん!」
そんな、無邪気な会話を交わせるだけの余裕があったのは最初だけだった。

どうやら、重慶っ子には辛さが足りなかったらしい。
重慶チームの3人が店のマスターに頼んで、辛そうな鍋の素を大量に追加し始めた。

大きなボウルにいっぱい入った真っ赤な鍋の素を、マスターがおたま山盛りにすくって、ボチャボチャと鍋に投入するのを、重慶チームの3人は満足そうに頷きながら見ている。

まさかの緊急事態を目の間にして、香港チームと日本チームは全員、恐怖で絶叫の声を上げたが、後の祭り。
ただでも辛かった火鍋が、煮えたぎるマグマにしか見えなくなった。もはや地獄の鍋だ。
重慶チーム 「まだ辛さが足りないよ」
香港・日本チーム 「Oh, it looks so evil...」(すごい邪悪に見えるわ...)

その日の探検の成果を、邪悪な火鍋で祝いつつ、夜は更けていった。
明日は、すでに探検済みの洞窟でファンケイビングの後、空港に帰るぞー。

(つづく)










2019年2月24日日曜日

広州 洞窟探検記 2018/12 ①

広州 洞窟探検記 2018/12 ①


近野由利子
※ 書いてみると、これは洞窟探検記というか、中国思い出記といった内容になってしまった。ハードコアな洞窟探検を求める方には、物足りないと思います。


去年の話になりますが、年末、中国の洞窟に行ってきた。
中国の洞窟には何度か行っているが、行くたびに中国の魅力というか面白さを新たに発見することができる。

洞窟自体はもちろんすばらしいのだけど、中国の人や文化のダイナミズムも、他の国では絶対に味わえないものがあり、訪れる前にはいつも、次はどんな事が起きるかとワクワクする。

中国人というと、世界的に良い評判を聞かないことが多いのが現状。残念です。
いつだったか、ベトナムで乗合いの高速バスに乗っていたとき、後ろの方の席に固まっていた多国籍なバックパッカーの集団が、みんなで中国人をこき下ろしていたんだけど、一人だけ「俺はあの国は素晴らしいと思う!長く滞在して、その素晴らしさを思い知った!」と強く主張する人がいたなぁ。

その気持ちもわかる。中国の雄大さと、現地で世話してくれる中国人の熱烈なおもてなしを体験すると、中国贔屓にならずにはいられないと思う。

思い起こせば、初めて中国に行ったのは2008年5月だった。
(10年以上前やん!)
当時、仲良くしていた中国人ケイバーに連れられて、重慶周辺の洞窟を旅して回った。

初めて見る中国の巨大なカルスト地形は、写真では見たことがあったが、実物もそのとおりの迫力だった。
それにも増して、中国の独特な文化にも圧倒された。
2011年に行ったカルストの谷


私たちは、村々の名士の家の軒先を借りて、泊めてもらいながら旅した。
いわゆるホームステイ?
田舎の村にはホテルなどの宿泊施設が無いので、中国の洞窟に行くときは、否応なくホームステイ形式になる。
現地の生活を知ることができるこのスタイルを、私はけっこう気に入っている。
2011年に泊めてもらった家の台所。だいたいの家がカマドの火で料理している


2008年の旅では、友人の中国人ケイバーが自分の遊び友達をたくさん連れてきて、彼らも一緒に旅したのだが、毎晩毎晩、大宴会が繰り広げられ、私たち日本人がちょっとでも顔を見せると「飲め、飲め」と酒を薦めてくるので、すっかり辟易して、私とほかの2人の日本人は、毎晩夕食が終わると、コソコソと逃げるように寝袋に潜り込んで、宴会から身を隠した。

中国では、盃を酌み交わすことで親睦を深めるので、彼らにしてみたら、私たちは非常に失礼な客人だったのだけど、静かに飲むならまだしも、どんちゃん騒ぎと一気飲みの連続にはとてもついていけなかった。

このとき、私たちはお酒を飲めない、ということにして断っていたのだが、そののち、2015年11月に国際的なケイビングイベントで中国を訪れた際に、別の友人たちと軽く飲んでいるところを、偶然、このときの仲間に目撃されて、バツの悪い思いをしたことがある。

向こうは悪意はないので、できれば嘘をつかずに済むといいのだけど、何しろ「外国人だから文化が違うのね」という同情心を一切持ってくれないので、苦し紛れに嘘をつくという羽目になってしまった。


夜の宴会問題のほかには、トイレのレベルが高すぎるところも結構なショックだった。

今となっては、かなりレベルの高いトイレも優雅に使いこなせる私。
しかし、当時はまだほとんどアジアを旅した経験が無く、いきなり中国の田舎でトイレ体験だったのだから、そりゃもう衝撃だった。

よくバックパッカーの旅行記なんかにも書いてあるけど、地面に長ーい溝があって、そこに用を足し、隣の人のモノが流れてくるのを眺める、というやつ。これはスタンダードコース。

地味に辛かったのは、トイレの扉がなくて、シャワーカーテンだけが境界だった家。
みんなが食事するエリアとトイレの境界は、強固なものであってほしいのに...。

トイレに入っている間、風が吹くたびに薄い水色のシャワーカーテンがフワフワとゆらぎ、外のエリアからの光が見え隠れするのだ。
和気あいあいと人々が食事するエリアと、一人静かに過ごすべきトイレエリアの境界が曖昧すぎるではないか...。

初回は、カーテンが動かないように、しっかりと端を掴みながら用を足したが、二回目からは悟りを開き、尻を見られたって別にいいわ、という気持ちになって、堂々と用を足すことができた。
境界という概念の曖昧さ、そんな哲学的命題を、身をもって体験することができた。

そして、私のお気に入りは、農家の定番トイレ。

農家では、必ず、各家庭の家畜小屋の隅っこにトイレがあって、みんなが出したものをそのまま隣にいる豚さんや牛さんにスナックとして提供している。
古き良き、循環スタイルだ。

少し町に近づくと、循環スタイルではなく、近代的?な汲み取り式のお宅もあったけど、それでも基本的にトイレの場所は家畜小屋の隅っこ。

ホームステイさせてくれる家は、村でも裕福な家なので、家畜もたくさんいる。
ブーブーモーモーコケッコーグワッグワッと大騒ぎの中で用を足すのは、結構楽しい。

特に素敵なのは夜中。
人間が眠る母屋から離れ、動物たちも寝静まった静かな家畜小屋で、健やかに眠る豚さん牛さんの体温と息遣いを間近に感じながら用を足すことができる。

昼間は騒いでいたニワトリたちも、柵の上に並んで静かに眠っている。
はー、なんてピースフルな空間だろ...。
夜は静かにしないと、ぶたさんが目を覚ましてしまう



いやはや。
どうしてもトイレ事情については熱くなってしまうわー。
しかし、他人が書いているのを読むのと、自分で実際に経験するのでは大違いなので、ぜひ一度は体験してほしい。


はじめて中国に行った2008年は、疲れ果てて、もう戻りたいとは思えなかったけど、3年後の2011年、また洞窟に誘われて、懲りずに中国に行った。

2回目の中国は、気合を入れて行った。
着いて早々に、とりあえず、ホテルの近くのベーカリーに、1人でコーヒーを買いに行ってみた。
重慶は大都会なので、おしゃれなベーカリーがある。
これだけハイセンスな店なら、少しくらい英語が通じるかも?
と、思ったのは間違いで、誰も英語が通じない。
メニューは漢字だけど、何が何だかわからない。

仕方なく、「カフェオレ2つ!あとブレンド1つ!」と大声で訴え続けた。
何語で注文したのか、今となっては覚えていないけど、大声でわめきつづきたことは覚えている。
諦めて帰っても良かったけど、ここで負けるわけにはいかないと思った。
最初は無視されたけれど、最後には向こうが根負けして、オーダー通りのものを作ってくれた。

勝ったと思った。
それからだと思うけど、何だか勝てる気がしてきた。
いや、勝てなくても同点には持っていけそうだ。

中国では英語がほとんど通じないので、私の得意分野が活かせないと思っていたが、そんなの些細なことだった、日本語でも英語でも大事なのは、「コーヒー飲まずにはここを一歩も動かねぇぞ!」という気合だった。
コーヒーくれ~!とゴネた、思い出のパン屋。写真を撮ったときは、おとなしくパンだけを購入。


それからは私も中国を楽しめるようになった気がする。
これが、アメリカとかヨーロッパだと、あんまりクレージーなことすると恥ずかしいのだけど、中国はなんだかみんなが精一杯なので、こっちも精一杯になりやすいのだろう。


と、ここまではプロローグ。長かったか。

そんなエキサイティングな中国に、いつも日本で一緒にケイビングしてるJ.E.Tメンバーたちと一緒に行きたいなーと考えていたのですが、私が海外の洞窟に行くときは一週間以上かけて行くので、真面目に社会人している人たちにとってはハードルが高くて、なかなか夢が実現できなかった。

そこへ、ここ2~3年、仲良くしてもらっている、香港洞窟探検隊のリーダー Pang Duckから、「週末、中国に探検に来ない?」とお誘いがあった。
週末に少し休みをくっつけて行ける程度の、短期の探検なので、みんな誘いやすいと思った。

きっと真面目な社会人も都合つけられるはず!と、J.E.Tのガールズケイバーをお誘いし、総勢 4名で中国洞窟探検に行くことになった!わーい!
洞窟で女子会だ!

なんか、やっぱり女子同士って楽しいわ。
ごめんね、むさくるしいオジサンたちよ。



おっと、香港洞窟探検隊のPang Duckを紹介しておかねば。
彼女とは、2016年にイギリスで開催された、「ユーロスぺレオ」というケイビングイベントで出会った。
その年の「ユーロスぺレオ」は、洞窟入り放題、ビール飲み放題の、まるで夢のようなイベントだった。

白人ばっかりのイベント会場で、私はPangが会場にいることに気づかなかった。
一緒に行ったJ.E.Tのオカザが「中国人の女の人がいたよ」と言っていたけど、私が実際に会ったのは最終日の前日だった。

ちっさいアジア人の女性同士、3人ですぐに意気投合し、翌日はイギリス人のケイバーと一緒にみんなで洞窟に行って、お互いに「お、やるな、こいつら」と認め合った(と、思っている)。

それ以来、Pang Duckのケイビングの先輩であるシャオツォン (Jia Liu)も合わせて四人で、一緒に洞窟探検に行くようになったのだ。

Pangは、ボーイッシュで小柄な女性ケイバーなのだけど、香港洞窟探検隊のリーダーとして抜群の統率力があり、登山・クライミングの経験が豊富なのもあって、さまざまなシチュエーションで優れた判断力や行動力を示しつつ、ユーモアいっぱいで、その場のムードを一気に明るくする。
間違いなく年下なんだけど、いつもすごいなーと感心し、尊敬するケイバーの一人。

Pangと知り合って、初めて知ったのだけど、香港人は中国本土の人とはまったく違う。
みんな基本的に英語が話せて、中国文化よりも西洋文化のほうに親しんでいる。
Pangも、イギリスに留学していたこともあり、英語が流暢なので、コミュニケーションがとりやすい。


Pangの先輩のシャオツォンは、生粋の重慶っ子なので、英語はそれほど得意でないけど、プロのケイバーとして国内外で活動していて、姐さん肌の頼れる存在。
無口なタイプだけど、洞窟の話になると、いつも興奮して熱弁をふるうので、シンパシーを感じている。


今回は、Pangとシャオツォンのほか、香港から顔なじみのメンバーが3人、重慶から2人の新顔メンバーが参加して総勢11名での広州洞窟探検隊となったのだ!

さてさて、中国で洞窟というと、貴州か重慶ですよね。え?しらん?
いや、そうなんですよ。貴州か重慶なんです。

でも、今回は広州。
広州は、中国でも最近、洞窟が見つかりはじめて、ちょっと注目のエリアらしい。

中国大陸の南の端っこ、香港の北側に位置する広州。
香港在住のPangたちは新幹線でやってきて、空港の近くでレンタカーを借り、移動手段とした。
シャオツォンたちは、重慶から車でやってきた。


日程は2018年11月30日(金)~12月2日(日)。
30日に広州の空港で集合し、12月1日と2日は洞窟に行き、2日の午後には解散、という駆け足の旅程。

私は帰国した3日(月)の朝、そのまま出勤という、社畜スケジュール。

私以外のJ.E.Tメンバーは、関西空港発着で、接続が良く、30日(金)の朝に出国の便だったが、私だけ名古屋発なので前日29日の朝から出国して、韓国で半日以上のトランジットの末にようやくたどり着いた。
こういうとき、地方に住むというのは、リスクが高い。

広州は気温14~15℃で少し暖かいと言われたけど、どうやらそれは洞窟の中の気温のことだったらしく、実際、到着すると、広州は南国だった。
昼間の気温は、20度以上だったと思う。

夜は少し肌寒いけれど、昼間はジャケット無しで大丈夫。
サボテンみたいな植物が道路沿いに生えていて、持参したダウンとかカイロとか、すっかり無駄だった。

予定では30日の昼すぎには、日本チームと中国チームが広州の白雲国際空港で集合して、目的地の陽川へ向かうはずだったのだが、それぞれのチームでいろんなトラブルが発生。

竪穴装備を忘れて取りに帰った人、
身分証を忘れて取りに帰った人、
勤務先の病院で患者が亡くなり、帰宅予定が遅くなった人、
広州に向かう途中で乗っていたタクシーが事故を起こした人....。

みんなの様々な事情で、予定どおりにスタートできなかったけど、
「まぁ、いっか」なムードで臨機応変に事が進んでいった。

全体の集合が遅れるので、香港チームのうち二人が、先発隊として先に洞窟のある陽川に向かって、洞窟のある場所をドローンで確認する任務を受けて出発した。

私たちは、街のレストランで食事しながら、のんびりと時間をつぶした。

全員集合できたのは夕方。
それからスーパーに寄って、洞窟内で食べる行動食を買ったりしてから、夜の20時近くにようやく高速道路に乗れた。
マイペースのPangも、さすがに焦ったようで、必死の様子で車をひたすら走らせた。
陽川のインターで降りたころは、夜22時。

みんな空腹だったので、先発隊の香港チームの二人の誘導で、インターの近くの鶏鍋屋さんで軽く乾杯&食事した。

広州は地鶏が名物。鶏鍋で乾杯~。水炊きみたいな感じ。うまい
苗洞窟のある村で作っているという地酒を味見した
放し飼いの地鶏は臭みがなくて美味

食事のあとは、高速インターから近いホテルへチェックイン。
いつものように農家でホームステイするのを期待していたけど、陽川はそれよりも都会なので、ホテルがあった。

宿泊したホテル。安い!キレイ!Wifiあり!
翌朝はホテルから車で20分くらいの村にある洞窟へ行くそうだ。
朝8時半にロビーで集合して、朝ご飯を食べに行こうと約束して、それぞれが部屋に分かれていった。

部屋に行ってからは、明日のケイビングの用意をしたり、シャワーを浴びたりして、ベッドに入ったのは深夜1時近かった。

長旅にはつきものの、長くてあわただしい一日だった。

つづく