キルギス洞窟(岩陰)探検遠征 8 最終回
近野由利子
9/14~16の3日間は、ナリンの町から近いキャンプサイトを起点にして、周辺の山を歩いて洞窟を探した。
3日目。目的地に行く途中で道に迷い、村のおじさんにヒアリング |
結果的には、短い穴しかなかったけれど、これは洞窟だよな!と思ったものは測量した。というか、とにかく、ちょっとくらい測量したかったのだ。
なんて言うと、測量がすごい楽しいみたいかな。
誤解の無いようにしておきたいのですが、洞窟測量が一般的な基準でそんなに楽しいってわけではないです。
一度でも経験のある方はおわかりと思いますが、その作業は退屈で辛く、終わりの無いものです。これを "楽しめる" のは、ごく少数の変人かと。
ケイビング自体が変態要素が強いうえ、さらに洞窟測量を "楽しむ" のは、凝縮された変人だよなーと思いつつ、やり始めるとやめられない。
狭くて水の流れる支洞で、寝転がって必死にポイントをとっているとき、ふと、湧き上がる高揚感...。て、そんなの私だけ?もしかして。
でも、もうここで行き止まり=測量おしまい、かと思ったポイントで、まだまだルートが続いていると分かったときは、めちゃ面倒くさい。ここで、モチベーションを再起動する必要がある。
誤解の無いようにしておきたいのですが、洞窟測量が一般的な基準でそんなに楽しいってわけではないです。
一度でも経験のある方はおわかりと思いますが、その作業は退屈で辛く、終わりの無いものです。これを "楽しめる" のは、ごく少数の変人かと。
ケイビング自体が変態要素が強いうえ、さらに洞窟測量を "楽しむ" のは、凝縮された変人だよなーと思いつつ、やり始めるとやめられない。
狭くて水の流れる支洞で、寝転がって必死にポイントをとっているとき、ふと、湧き上がる高揚感...。て、そんなの私だけ?もしかして。
でも、もうここで行き止まり=測量おしまい、かと思ったポイントで、まだまだルートが続いていると分かったときは、めちゃ面倒くさい。ここで、モチベーションを再起動する必要がある。
この精神力は実生活でけっこう役立っていると思う。
ただし、私の場合、やたら測量したがるくせに、帰って製図を始めるまでが超絶面倒くさいという始末の悪さ。
まぁ、そんなことはさておき。
9/14 1日目。キャンプサイトから歩いてアプローチできる深い谷の両側の山に登って、洞窟を探した。
山のふもとの一軒のユルタに住んでいる家族が洞窟の場所を知っている、とアレクセイが言うので、
「彼らに洞窟の入り口まで案内してもらおうよ。それが一番早いよ」
と提案したのだけど、なかなかその家族とタイミングが合わず、結局は自分たちで、あてもなく歩くことになった。
私たちは、深い谷の両側の稜線を、二手に分かれて歩いた。
谷は急峻で、2つの隣り合った稜線の間は100~200 mくらいしか離れておらず、木もほとんどなかったので、反対側の稜線を歩いている人や牛を簡単に見つけることができた。
吉田さんと私は、いったん稜線上に登りきると、斜面に座り、持ってきた食料をつまみながら、谷の反対側にいるギルバートやマーティンを双眼鏡で観察した。
観察しても、ギルバートたちが何か面白いことをするわけではない。
「あ、ギルバート、あっちに歩いていった」
「ほらほら、あの白いバックパックがカーチャだよ」
「いや、あれは牛だろ」
とか、言うだけなのだ。
洞窟が見つからないので、よっぽど退屈していたのだろうなぁ。
この観察がけっこう楽しくて、気づいたら1時間以上過ぎていた。
後でギルバートに、「稜線でのんびりピクニックしてたでしょ。見てたよ」と言われた。
そりゃ、私たちから見えるから、向こうからも見えるよね。
いつまでも人の観察をしていても仕方ないので、重い腰を上げて、さらに稜線を歩き続けることにした。
ただし、私の場合、やたら測量したがるくせに、帰って製図を始めるまでが超絶面倒くさいという始末の悪さ。
まぁ、そんなことはさておき。
9/14 1日目。キャンプサイトから歩いてアプローチできる深い谷の両側の山に登って、洞窟を探した。
山のふもとの一軒のユルタに住んでいる家族が洞窟の場所を知っている、とアレクセイが言うので、
「彼らに洞窟の入り口まで案内してもらおうよ。それが一番早いよ」
と提案したのだけど、なかなかその家族とタイミングが合わず、結局は自分たちで、あてもなく歩くことになった。
私たちは、深い谷の両側の稜線を、二手に分かれて歩いた。
谷は急峻で、2つの隣り合った稜線の間は100~200 mくらいしか離れておらず、木もほとんどなかったので、反対側の稜線を歩いている人や牛を簡単に見つけることができた。
吉田さんと私は、いったん稜線上に登りきると、斜面に座り、持ってきた食料をつまみながら、谷の反対側にいるギルバートやマーティンを双眼鏡で観察した。
観察しても、ギルバートたちが何か面白いことをするわけではない。
「あ、ギルバート、あっちに歩いていった」
「ほらほら、あの白いバックパックがカーチャだよ」
「いや、あれは牛だろ」
とか、言うだけなのだ。
洞窟が見つからないので、よっぽど退屈していたのだろうなぁ。
この観察がけっこう楽しくて、気づいたら1時間以上過ぎていた。
そりゃ、私たちから見えるから、向こうからも見えるよね。
岩が全然溶けていなくて、洞窟がなさそうなので、空も心も曇り模様 |
昼過ぎになって、突然、雷が鳴り始めたと思ったら、大粒のヒョウがボタボタと降り始めた。
稜線から、谷の反対側の壁を観察しながら歩いていき、いくつか洞口らしいものがあったので、谷の始まりまで山を歩き、降りやすい場所を見つけて、谷底に降りて行った。
谷の底で3つ、短い洞窟を見つけたので、私はそのうち2つを測量した。
もう一つは、崖の上のほうに登らないといけなかったので、パスした。
ひとつめ、ギルバート洞窟。発見者ギルバート。
7メートルしかないけど、奥のほうに青い結晶のようなものがあって興味深い。
ふたつめ、ミゲル洞窟。発見者ミゲル。
平面では4.8メートルですが、上のほうに向かって、見える限りでは7メートルくらい伸びていた。
まだ登っていけばルートがあったのかもしれないが、洞口が谷の底なので、いくら上に登っても、結局は谷の上に出るだけなので、見える範囲だけ確認しておしまいにした。
「いいから早く帰ってパッキングしたい!」
「早くWiFiに接続したい!」
「早くシャワー浴びたい!」
「早く日本食食べたい!」
ここでみんなの目がキラーンと光った。
カーチャ「え?日本食レストランあるの?」
マーティン「そこ、おいしいの?」
ミゲル「行きたいな」
ギルバート「みんな行くなら行こうかな」
というわけで、一目散にビシュケクのホテルに帰った私たちは、大急ぎでシャワーを浴びて、日本食レストランに全員で押し掛けたのだった。
もちろん行ったのは、初日に発見したFURUSATO。みんな、この店のサービスと味に大満足でした。
FURUSATOで始まり、FURUSATOに終わったキルギス遠征だった。
そのとき私は、周りに何もない稜線上を一人で歩いていたので、雷鳴がすごく近く感じられて、ちょっと怖かった。
雷に打たれないように、岩の影に隠れながら進んだ。
しばらくしても雷がやまず、どうしようかと思っていると、少し先を歩いていた吉田さんから無線で連絡があり、危ないから下山しようということになった。
吉田さんはとても用心深いので、きっと下山しようと言うだろうと思っていた。
キャンプに戻ると、ほかのメンバーはすでに下山していて、大きなテントにみんなで集まってティータイムをすごした。
実は、この日は少し寂しい日だった。
セシリオが仕事の関係で早めにスペインへ帰るため、翌日には首都のビシュケクに戻ることになっていた。
セシリオが仕事の関係で早めにスペインへ帰るため、翌日には首都のビシュケクに戻ることになっていた。
みんな名残惜しくて、連絡先を交換し、また会おうと約束した。
セシリオは私と吉田さんに
「日本人に会ったのは初めてだけど、君たちを見ていたら日本に興味がわいてきた。
今度、ミゲルと一緒に遊びに行きたいと思ってるよ。よろしくね。」
今度、ミゲルと一緒に遊びに行きたいと思ってるよ。よろしくね。」
と言ってくれた。
私たちの何に興味がわいたのだろうか...。
分からないけど、日本に興味を持つきっかけになれて嬉しい。
しかし、私たちはあまり平均的な日本人ではないと思うので、彼らが実際に日本に来てどう思うのか、少し心配だ。
9/15 2日目。アレクセイの友達の情報で、洞窟があるという谷へ向かう。
できれば案内人を頼んでほしいのだけど...。今日も、よくわからない山をさまようのか...。
それでも、マーティン・カーチャ・ギルバートはやる気満々なので、つられて一緒に歩く。
この日の谷の規模は小さいけれど、やはり急峻だった。谷の幅は広くても50mくらい、深さは、深いところで80mくらいかな。
この日の谷の規模は小さいけれど、やはり急峻だった。谷の幅は広くても50mくらい、深さは、深いところで80mくらいかな。
稜線から、谷の反対側の壁を観察しながら歩いていき、いくつか洞口らしいものがあったので、谷の始まりまで山を歩き、降りやすい場所を見つけて、谷底に降りて行った。
谷の底で3つ、短い洞窟を見つけたので、私はそのうち2つを測量した。
もう一つは、崖の上のほうに登らないといけなかったので、パスした。
ひとつめ、ギルバート洞窟。発見者ギルバート。
7メートルしかないけど、奥のほうに青い結晶のようなものがあって興味深い。
ふたつめ、ミゲル洞窟。発見者ミゲル。
平面では4.8メートルですが、上のほうに向かって、見える限りでは7メートルくらい伸びていた。
まだ登っていけばルートがあったのかもしれないが、洞口が谷の底なので、いくら上に登っても、結局は谷の上に出るだけなので、見える範囲だけ確認しておしまいにした。
9/16 3日目。今日の場所は有望!とアレクセイ。
昔は鉱山があった町の近くなので、ちょっと有望かも。
途中で少し迷いつつも、比較的スムーズに目的地に到着し、谷の入り口に住む農場主に話を聞く。
昔は鉱山があった町の近くなので、ちょっと有望かも。
途中で少し迷いつつも、比較的スムーズに目的地に到着し、谷の入り口に住む農場主に話を聞く。
農場主「洞窟?あるよ。谷の入り口から1kmくらい歩いた右側だよ。羊が500頭くらい入れる、でかいやつさ!」
ミゲルと吉田さんは歩くのが早いので、先に洞口の見える場所に到着して待っていた。
洞口は、川沿いから標高で150mくらい登ったところにあり、ミゲル・吉田さん・私・ギルバートは登り始めたけど、あとのみんなはギブアップ。
ここでも標高は2900mくらいだったので、私だけでなくみんな、少し登るだけで息が切れて、辛いみたいだった。
ここでも標高は2900mくらいだったので、私だけでなくみんな、少し登るだけで息が切れて、辛いみたいだった。
左上の岩山に黒く洞口が見える |
山の斜面にはトゲトゲの灌木がたくさん生えている。足元が不安定なので、登る途中で、何度かトゲトゲの枝をつかむことに…。
一時間くらいして、洞口にたどり着いたら、手がボロボロ。
しばらく、スマホの指紋認証ができなかった…。
洞窟はたしかに大きいけど、羊500頭には狭かった。ギュウギュウに詰めても50頭かな?
でも。ここに羊を連れてくるのが至難の技だよ。
床面は大量の鳥の糞でおおわれていた。
帰りに別の山に寄って、いくつかドローンで洞口らしき穴をチェックしたけど、いずれも入り口から奥が見える程度の深さだった。
この日が探検の最終日だったので、帰り道にウォッカを買って、夜は乾杯大会。
外国人は乾杯のコメントが上手だよな。
一瞬で思いつくの?それとも、昼間ずっと考えてるのか?
翌朝は一斉に片付け。
みんなで首都のビシュケクにわき目も降らずに帰っていった。
アレクセイは、途中にある有名なリゾート地・イシククル湖へみんなを案内したがったが、みんな早く帰りたがった。
ナリンからビシュケクへの帰り道の景色 |
アレクセイは、途中にある有名なリゾート地・イシククル湖へみんなを案内したがったが、みんな早く帰りたがった。
「いいから早く帰ってパッキングしたい!」
「早くWiFiに接続したい!」
「早くシャワー浴びたい!」
「早く日本食食べたい!」
ここでみんなの目がキラーンと光った。
カーチャ「え?日本食レストランあるの?」
マーティン「そこ、おいしいの?」
ミゲル「行きたいな」
ギルバート「みんな行くなら行こうかな」
というわけで、一目散にビシュケクのホテルに帰った私たちは、大急ぎでシャワーを浴びて、日本食レストランに全員で押し掛けたのだった。
もちろん行ったのは、初日に発見したFURUSATO。みんな、この店のサービスと味に大満足でした。
FURUSATOで始まり、FURUSATOに終わったキルギス遠征だった。
ヘレエナのこと
ヘレエナは、最後の三日間だけ同行したブルガリア人の生物学者ですが、昼間は私たちと行動しなかった。
なぜなら、彼女の活動時間は夜中。
コウモリの研究者なので、コウモリの時間に合わせていた。
夕方から山に登り始め、コウモリの通りそうな谷に網を仕掛けて待機。
網にかかったコウモリのDNAを採取してリリースする。
DNAはごく小さな針で採取するので、コウモリへのダメージは最小限だ。
極寒の山頂で、夜中ずっと起きてコウモリの番をするので、大変な作業だ。
残念ながら、ナリンでは一頭もコウモリが捕まえられなかったらしい。
コウモリはたくさん飛んでいるのだけど、網にかからなかった。やはり、洞口に仕掛けないと、避けられてしまうのだろう。
去年は、オシと言う町で地元の大学生を連れて洞窟に行き、共同調査を行ったとのこと。
キルギスの学生にコウモリの大切さを知ってもらい、無意味な捕獲や、住処である洞窟などの自然破壊を止めるべきという考えを広めたいと言っていた。
コウモリは農作物の害虫や、蚊などをエサとして食べてくれるので、知らないうちに人の役に立っているのです。
コウモリは農作物の害虫や、蚊などをエサとして食べてくれるので、知らないうちに人の役に立っているのです。
また、キルギスでは、まだまだ女性は家を守るべきという考えが根強いことも指摘し、大学に残って研究を続けたいと言う女子学生が、親の反対を受けて諦めた例を挙げて、キルギスの女性にも希望すれば社会で活躍できる環境になってほしいと力説していた。
キルギスの自然と人に深く関わって、キルギスが大好き!と言いながらも、変わるべき点を指摘して、積極的に活動しているヘレエナはすごいなと思う。
ヘレエナ「オシには洞窟あったよ」
くー、無念。
オシはとてもよく調査されているので、ターゲットから外したのだった。
帰国したときには、もうキルギスには二度と行かないと思ってたけど、洞窟の情報があれば、また行きたい。
コキヤは、圧倒的な自然がすばらしい地方で、行って良かったと思うけど、洞窟が無さすぎる!
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