キルギス洞窟(岩陰)探検遠征 3
近野由利子
今回の遠征のルートは以下のとおり。
C地点の付近がコキヤ(Kok-kiy)エリア。ここから、さらに中国国境近くまで南下したところにキョルス(Kel-suu)湖という小さな湖があって、その湖の南端に洞窟があるという情報あり。まずはそこを確認するためのキャンプを設営、その後キャンプを移動して、さらに50kmほど東側の渓谷付近を調査。
最後に、少し北へ戻り、ナリン(Naryn)という小さな町の近くにある山(B地点)を調査する。
しかし、昨日アレクセイがミーティングのときに、ターゲットエリアの写真を見せてくれたのだけど、どの写真を見ても、洞窟が無さそうだった。
すでに確認済みという洞窟の写真も、規模が小さくて、たまたまちょっと空いてますって感じだった...。
他のメンバーは、ケイビングの経験の少ないメンツばかり...。
この負け試合感たっぷりなスタートから、どんな遠征になるのか、ワクワクヒヤヒヤしつつのキルギス2日目を迎えた。
6/9 10:00ごろに来るという話だったスペイン人2人組は、ちょっと早めの9:30にはホテルに到着した。
一目見て、経験豊富なケイバーといった雰囲気の、40~50代くらいの男性二人組、セシリオとミゲルだった。セシリオは愛嬌を含んだまなざしの巻き毛のナイスガイで、ミゲルは不器用そうな大柄の無口なタフガイタイプ。二人とも英語はあまり得意でないけど、体力も経験もあるので、チームのみんなに頼られた。
さすが、参加者はみんなフットワークが軽くて、荷物を次々と車に積み込んで、11:00になる前に全員がミニバスと4WDのミニバンに乗り込んで、出発した。
今日中にコキヤまで行くのは無理なので、途中のナリンで一泊する予定だ。
道中、スーパーで買い物したり、サービスエリアみたいなところでランチを食べたり、そのあとは1時間おきにトイレ休憩でストップした。どうやら、車を定期的に休ませたいみたいだった。
スーパーの向こうに見える天山山脈の大迫力 |
スーパーやサービスエリア的なレストランでは、トイレが有料だった。5ソム硬貨を、入り口のカウンターにいるおばちゃんに渡すと、カウンターの小窓に棒に刺したトイレットペーパーがあって、女性にはそれを少しちぎって渡してくれる。
ちなみに、キルギスのトイレットペーパーはダブルで厚手で、比較的いい紙だった。経済力が低い国はトイレットペーパーが薄くて粗いのだけど。キルギスは裕福な国ではないから、紙を薄くするセコさが身に付いてないのではないかな。大国ロシアに守られてきた箱入り娘なのかも。
なお、最近、日本のトイレットペーパーの質が下がってきているので、日本経済を憂いているところ。
15:00にはキルギスの有名なリゾート地イシククル(Ysyk-Köl)湖に到着した。ここで、チームのごはんを作ってくれる、コックのレナをピックアップした。
イシククル湖の横をかすめただけなので、透明で美しいという湖畔を見ることはできなくて、石の山と枯草ばかりの景色の中、車を走らせた。日本人には見慣れない景色だけど、カリフォルニア在住のギルバートは、「うちの近所とほとんど植生とか地形が同じだよ」と言っていた。
ナリンに近づくと、田舎というか、僻地っぽくなってくる。
道沿いに出店が並んでいるところで休憩した。
ここで、トゥルンは「これクルシュだよ。飲んでごらん。」と出店のおばちゃんから白い飲み物が満タンに入ったコップを受け取った
こ、これは!おなじみの発酵食品だ!
だいたい探検に行くと、その国の発酵した「何か」を食べることになるのだが、キルギスの場合は、馬の乳を発酵させてみましたー、ということで馬乳酒でした。
飲んでみたら、ちょっと酸っぱいけど、特に嫌な感じはしない。この後も何度かクルシュを飲んだけど、この店のクルシュは味がいまいちだった。
ただし、味よりも、手作りで、表面にいろいろ浮かんでるクルシュをガブ飲みするのはちょっと無謀だ。みんなで一口ずつ味見して、トゥルンに返すと、トゥルンも出店のおばちゃんにコップを返して、おばちゃんはそのまま残りをジャバッとタンクに戻した。
うーん。いいけど。初日にお腹は壊したくないのだ。
サービスエリア的なレストランのビュッフェはボリューム大! |
15:00にはキルギスの有名なリゾート地イシククル(Ysyk-Köl)湖に到着した。ここで、チームのごはんを作ってくれる、コックのレナをピックアップした。
イシククル湖の横をかすめただけなので、透明で美しいという湖畔を見ることはできなくて、石の山と枯草ばかりの景色の中、車を走らせた。日本人には見慣れない景色だけど、カリフォルニア在住のギルバートは、「うちの近所とほとんど植生とか地形が同じだよ」と言っていた。
ナリンに近づくと、田舎というか、僻地っぽくなってくる。
道沿いに出店が並んでいるところで休憩した。
ここで、トゥルンは「これクルシュだよ。飲んでごらん。」と出店のおばちゃんから白い飲み物が満タンに入ったコップを受け取った
こ、これは!おなじみの発酵食品だ!
だいたい探検に行くと、その国の発酵した「何か」を食べることになるのだが、キルギスの場合は、馬の乳を発酵させてみましたー、ということで馬乳酒でした。
飲んでみたら、ちょっと酸っぱいけど、特に嫌な感じはしない。この後も何度かクルシュを飲んだけど、この店のクルシュは味がいまいちだった。
ただし、味よりも、手作りで、表面にいろいろ浮かんでるクルシュをガブ飲みするのはちょっと無謀だ。みんなで一口ずつ味見して、トゥルンに返すと、トゥルンも出店のおばちゃんにコップを返して、おばちゃんはそのまま残りをジャバッとタンクに戻した。
うーん。いいけど。初日にお腹は壊したくないのだ。
道路わきでクルシュを売る出店 |
到着すると、さっそくレナが夕食を作ってくれると言って、ゲストハウスのキッチンで料理を始めた。とりあえず、手伝えることが無さそうだったので、ふらっと街に出ることにした。
マーティンとカーチャ、ギルバートも、散歩に出かけていた。
ナリンは、キルギスの南のほうで乗馬や登山をする外国人が宿場に使っているようで、英語の表示があるホテルやゲストハウスがちらほら見られるけど、基本的には田舎町だった。
スーパーや店の看板が地味で、入り口も閉まっていて、外から見るとあんまり店っぽくない。18:00にはほとんどの店が閉まるので、この日は小さな売店くらいしか営業していなかった。
ナリンの町。左の建物はスーパーマーケット。地味~。 |
80ソムのビールを買ってゲストハウスに戻り、しばらくすると夕食ができた。レナは慣れないキッチンでいきなり12人分の食事を作ったので、勘が狂ったらしく、スープの量が極小だったけど、味は良かった。レナの料理はいつもやさしい味で、この日以降はいつもボリューム満点だった。
ゲストハウスの食堂 |
夕食を食べ始めたのが21:00ごろで、みんな疲れていて、食後はそれぞれ散り散りに部屋に帰って就寝した。標高2000mの町なので、夜はけっこう冷え込んだ。
このゲストハウスは、シャワーが母屋に1つしかないので、翌朝は早起きしてシャワーを浴びに行った。私が入ろうとしたら、ちょうどセシリオと鉢合わせした。セシリオは昨日の朝にスペインからキルギスについたばかりで、長旅で疲れているだろうと思ったけど、シャワーの権利は譲れない!と思って笑顔でシャワールームを奪い取った。
もちろん、できるだけ早めに浴びて、あとはセシリオに譲ったけど、若き日の私なら、もじもじしてシャワーは諦めただろう。この図太さはオバチャン効果か、探検家のサバイバル力か?
この日は9:20には朝食も済ませて出発したが、途中、アレクセイが乗る4WDとはぐれて、私たちのミニバスは、滝のある谷の入り口で1時間ほど待機した。
ここには洞窟から水流が流れ出す滝があって、みんなワクワクして見に行ったのだけど、洞窟は小さくて入れなかった。
洞窟から滝が流れ出すワクワクポイント |
ここで気づいたのだが、セシリオが着ているTシャツにはLA VENTAのロゴが入っている!LA VENTAはイタリア人が中心の探検チームで、北極やナイカ洞窟やギアナ高地など、世界中でかっこいい洞窟探検をして、さらに写真や映像まで作っているのだ!あこがれのLA VENTAのメンバーに会えるとは!と、いきなり一人で大興奮!
聞いてみると、セシリオはLA VENTAのメンバーではないけど、LA VENTAが行ったメキシコのチャパスの探検に参加したらしい!やばい、かっこいい。
もう洞窟が見つからなくても満足かも。
その後、さらに南へ車を走らせると、中国との国境に近づくので、軍のチェックポイントを2か所通過しないといけない。事前の許可書が必要で、アレクセイが全員の許可書を用意してくれていた。
1つ目のチェックポイントで、書類のチェックをして、2つ目のメインチェックポイントでパスポートと各自の顔を見比べて確認すると言う念の入りよう。車から降りなくてもいいけど、兵士は真面目に書類を確認する。
敵国?アメリカ国民のギルバートは、ちょっとみんなよりも長めに書類を確認されていた。実は、許可書の発行も、みんなよりも時間がかかったらしい。冷戦時からの確執は根深い。
チェックポイントを無事に抜けると、いよいよコキヤだ。標高は3000m。
第一のキャンプサイトには15:30に到着した。
川岸のだだっ広い平地に、ユルタという移動式住居の宿を経営している遊牧民の家族がいて、その隣にキャンプを作った。この家族の子供は、小学生くらいだけど、平然と大きな馬を乗りこなす。彼らが馬を走らせる姿は、間近に見るとなんとも美しくて、見とれてしまう。
全員のテントと、食堂の大きなテントを設営しても、まだ17:00で、日没の遅いキルギスではまだ時間がある。
大きな馬を乗りこなす少年。走る姿は美しすぎて写真撮れなかった。 |
私と吉田さん、セシリオとミゲルは、アレクセイと一緒にキョルス湖へ下見に行くことにした。キョルス湖はキャンプサイトから6kmほど南にある。
渓谷の川の始まりのところに、大量の落盤がたまっていて、それが自然のダムとなってキョルス湖ができたのだ。落盤が散らばる丘を抜けると、突然、湖が現れる。
アレクセイは事前のメールで、夏は湖の水が枯れて、歩いて対岸まで行けると言い張ったけど、案の定、キョルス湖はきれいな青い水をたたえていた。
落盤が散らばる丘 |
歩いて行ける範囲でも、いくつか洞窟っぽい穴があったけど、どれも立派な岩陰だった。
突然現れるキョルス湖。左側に黒く見えるのは大きな岩陰。 |
食事の後、翌日の計画について話し合った。
私と吉田さん、セシリオとミゲルはキョルス湖を越えて対岸の洞窟を確認に行くことになった。アレクセイの持っている2人乗りのゴムボートと私が持って行ったパックラフト(1.5人乗り?)を使って、湖を渡るのだ。
マーティンとカーチャ、ギルバートは、道路から山の中腹に見えた大きな穴へ行くルートを探しに行く。マーティンは、3DやVR、ドローンなど最新技術を駆使した映像を作る写真家で、ナショナルジオグラフィックの仕事もしたことがある有名人。ドローンで3D写真を撮影して、山の上にある穴が奥に続いているか、確認できるのだ。彼の技術とハイテク装備の数々は、遠征中に大活躍した。
翌日の計画を話し合う |
さて、明日に備えて寝ることになった。
まだ夏の終わりのキルギス。昼間は15~20℃くらいの気温で快適なのだけど、日が落ちると急激に気温が下がり、標高3000mのコキヤは夜には氷点下10度になる日もある。キャンプサイトは標高3300mだった。初日の夜、氷点下でのテント泊の洗礼を受けた。何も考えずに持ってきた寝袋ファイントラックのポリゴンネストは、夏秋用で、使用できるのは7℃までだった...。
ダウンジャケットとフリースを着て寝袋に入ったけど....寒い!
死ぬかもしれない…。
あわてて、非常用に持っているレスキューシートで寝袋を包むようにしたら、温かく寝ることができた。レスキューシートは、ケイビングのときも待機中に暖をとるため使うので、バッグの中とヘルメットの中に常備している。
私は登山はあまり行かないので、こんなに標高の高い場所でキャンプしたことがなかった。翌日からは、徐々にごく軽い高山病の症状が出たり、標高が体に与える影響を実感できて、いろいろと良い経験になった。
0 件のコメント:
コメントを投稿